鈴木デンタルクリニックでは、過去に「インプラント治療は難しい」と言われた方にも対応しています。このページでご紹介するのは、被せ物が3つ外れて来院され、上あごのほとんどの歯を失った70代の患者さまです。ご相談時の状態から治療後まで、実際の症例写真とレントゲン写真でご紹介します。
浜松市浜名区・浜北でインプラント治療は困難と言われた方や、以前入れたブリッジ・被せ物のやり直しをお考えの方は、どうぞ参考になさってください。
「右上の歯が痛い。被せ物が3つとれてしまった」
「どうしても入れ歯は入れたくない」
そうおっしゃって来院されたのが、この患者さまです。長年にわたって治療を重ねてこられ、お口全体にブリッジや被せ物が多数入っている状態でした。合っていない被せ物も多く、しっかり噛める場所は限られていました。
入れ歯だけは避けたい。そして「これを人生最後の治療にしたい」。それが患者さまのご希望でした。
こちらは、初診時のお口の中です。銀色のブリッジや被せ物が並び、前歯の白い被せ物は歯茎との境目が黒ずんでいます。上の前歯が下の前歯をほとんど覆い隠すほど噛み合わせが深く(過蓋咬合)、奥歯から前歯にかけての歯並びのラインも波打っていました。
当院では、治療方針をご提案する前に必ず詳しい検査を行います。
この患者さまにも、
を実施しました。
白く写っているのが、これまでに入れたブリッジや被せ物です。神経を失った歯が多く、合っていない被せ物が数多く入っている状態でした。
お口の模型を分析したところ「Angle2級2類」という、いわゆる出っ歯の状態で、上の前歯が下の前歯より5mm前に出ていました。そのうえ噛み合わせがとても深く、上の前歯が下の前歯を8mmも覆い、ほとんど隠している状態です。
あごを横に動かすと、右側では右下の前から4番目の歯、左側では左下の前から3番目の歯(犬歯)が道しるべになり、奥歯どうしがぶつからないようになっています。横の動きには問題ありません。
一方、あごを前に出すと、左上の前から6番目の歯と、左下の前から7番目の歯がぶつかってしまう状態です。
お口全体を写したレントゲンは、歯や骨のおおまかな状態をつかむには適していますが、1本1本の歯がどこまで傷んでいるかまでは写りません。「歯を支える骨がどこまで失われているか」「被せ物の下で虫歯がどこまで進んでいるか」を確かめるには、歯を1本ずつ拡大して撮る必要があります。
こちらは歯を1本ずつ拡大して撮ったレントゲンと、歯茎の検査結果です。被せ物の中で再発した虫歯、根だけが残った歯、根の先に黒く写る影(炎症が起きているサイン)を、お口全体にわたって確認しました。
表の数字は歯と歯茎のすき間にある溝(歯周ポケット)の深さを表します。「BOP 85.2%」は、検査した場所の85.2%から出血があったという意味で、歯茎に広く炎症が起きている状態でした。
検査のあと、実際にブリッジや被せ物を外して確認しました。すると、右上の奥歯1本を除くほとんどの歯で、歯茎の下まで進んだ虫歯、歯の根の中まで進んだ虫歯、歯に入った細かいひびが見つかりました。被せ物を直しても、再び同じ問題が起きる可能性が高い状態です。
検査と、実際に外して確認した結果をあわせて、上あごは右上の奥歯1本を除いて残すことが難しいと判断しました。一方、下あごの歯は残せる状態でしたので、失われた奥歯をインプラントで補い、下の前歯は先端の形を樹脂で整える「ダイレクトボンディング」を行う計画を立てました。
インプラントは、多く入れれば良いというわけではありません。残せる歯は残し、残すのが難しい歯は明確な根拠をもって判断することが大切です。
インプラント治療は、「失った本数が多いほど難しい」と思われがちです。しかし今回のケースで難しかったのは、失った歯の本数が原因ではありませんでした。
これまで奥歯の治療を何度も重ねてこられた結果、噛み合わせの高さが低くなり、下あごが本来より後ろにずれている可能性がありました。この状態のまま歯だけを入れ替えても、噛む力のかかり方は元のままです。時間が経てば、また同じように傷んでしまいます。
これは、少し口を開けた状態です。下の歯の先端を結ぶと、本来ゆるやかなカーブを描くはずのラインが、奥に向かって大きく落ち込み、大きく波打っていることが分かります。歯を1本ずつ治すだけでは、この状態は元に戻りません。
上あごの奥歯の上には「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞があります。歯を失うと、骨が痩せてこの空洞が下がってくるため、インプラントを支える骨の高さが足りなくなります。「骨が足りないのでインプラントはできない」と言われる原因の多くがこの状態です。
この患者さまも、骨の幅は十分にあるものの、高さだけが不足していました。
前歯は、歯の形だけでなく歯茎の形がそろっていないと自然に見えません。この方は左上の歯茎の土手にへこみがあり、そのまま歯を作ると左右差が出てしまう状態でした。
これらを一つずつ解決していく必要がありました。ここからは、実際にどう進めたのかをご説明します。
左上の写真:最終的な前歯の位置を確認し決定した。
右上の写真:パソコン上で作った完成形の歯。
下2枚:完成形の歯の位置から逆算して、インプラントを埋め込む場所と角度を設計しているところ。
いきなり最終的な歯をつくることはしません。まず噛み合わせの高さを確かめる装置と仮歯を入れ、その高さで無理なくお過ごしいただけるかを3か月かけて確認しました。
その結果、横顔のレントゲンで測り直すと、下あごの位置が本来の前方へ戻っていることが数値で判断できました。押し込まれていた下あごが、正しい高さを取り戻したことで本来の位置に落ち着いたということです。この新しい下あごの位置に合わせて、あらためて設計をし直しました。
仮歯を入れた状態の高さで無理なくお過ごしいただけることを確認してから、最終的な歯の設計に進みます。
インプラントは「骨があるところに入れる」のではありません。最終的に歯をどの位置に並べるかを先に決め、その位置に合わせて埋め込む場所と角度を設計します。見た目と噛み合わせの両方を整えるために欠かせない工程です。
下あごは歯を残せましたので、失われた奥歯をインプラントで補い、下の前歯は先端の形を整えました(ダイレクトボンディング)。埋め込んだインプラントが骨としっかり固まるまでには数か月かかります。この時間は省けません。
3か月ほど経過をみたところ、噛み合わせの高さが回復し、後ろに押し込まれていた下あごの位置も前方に戻ってきました。上あごの治療は、ここが整ってから始めます。
上あごの前歯は、3本のインプラントで支える計画としました。
このうち右上の1本は、骨の状態が良く、条件が整っていました。こうした場合には、歯を抜いたその日にインプラントを埋め込めます。手術の回数と治療期間を抑えられ、歯茎の形が痩せにくいという利点があります。
歯科用CTで骨の厚みを確認した上で手術を行い、術後もCTを用いて計画どおりの位置に入れられたことを確認しました。
左上の歯茎にへこみが残ったままだと、仕上がりに左右差が出てしまいます。そこで、ご自身のお口の中から歯茎の組織を採り、へこんだ部分に移植して厚みを回復させました。
左が処置前、右が処置後です。上段は正面から、下段は上から見たところです。へこんでいた部分に厚みが戻り、左右差がほとんど無くなりました。
手術中の写真を見る(血液が写っています)
上あごの奥歯は、上顎洞が下がってきて骨の高さが足りない状態でした。そこで空洞の底を持ち上げ、骨のもとになる材料を入れた上で、左右同時にインプラントを埋め込みました。
増やした骨が固まるまでにも、やはり数か月お待ちいただきます。「骨が足りないのでインプラントはできない」と言われた方でも、こうした処置で対応できる場合があります。
こちらは、4つの段階を終えた時点の写真です。上あごに7本、下あごに4本のインプラントが入りました。この時点ではまだ歯は付いていません。ここから、上に入れる歯を作っていきます。
設計したとおりの位置と角度でインプラントを埋め込めました。
上あごの歯は3つのブロックに分けて作っています。このようにブロックを分けておくと、万一のときに問題のある部分だけを外して対応でき、お手入れもしやすくなります。
噛み合わせの高さを取り戻したことで、奥歯から前歯まですき間なく噛み合うようになりました。
奥歯から前歯にかけての歯並びのラインが整い、歯茎の縁の高さもそろいました。歯茎のラインがそろうと、見た目が自然になるだけでなく、歯磨きもしやすくなります。
奥歯から前歯へと続く歯並びのライン(咬合平面)が整い、歯と歯茎の境目のライン(歯頚線)もきれいにつながりました。
食事のとき、あごは上下だけでなく左右にも動きます。治療後は、あごを横に動かしたときに犬歯だけが当たり、奥歯が離れる状態を作れました。奥歯やインプラントに、横向きの負担がかかりにくくなります。
治療前は上の前歯が下の前歯を深く覆っていましたが、治療後は適切な重なりになりました。噛み合わせが深すぎると前歯に負担がかかりやすくなるため、この改善も治療の目的の一つでした。
セファロ(横顔のレントゲン)で確認すると、噛み合わせの高さと、上あごに対する下あごの位置が正しい状態に整ったことがわかります。下あごが少し前に移動したことによって横顔のバランスも改善され、気道も広くなったように見えます。
ブリッジや被せ物が外れる背景には、歯そのものの問題だけでなく、噛み合わせの高さやあごの位置が崩れている場合があります。
当院では、被せ物のやり直しやインプラントのご相談をいただいたとき、失った歯を補う方法を考える前に、まずお口全体がどうしてこの状態になったのかを調べます。原因を残したまま新しい歯を入れても、また同じことが起こってしまうからです。
ほかの症例のインプラント症例写真や、当院が手がけてきた症例数については、症例一覧のページでご覧いただけます。
治療名:インプラント治療(上あご全体・下あごの奥歯)
治療の説明:歯を失った部分のあごの骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着して、噛む機能と見た目の回復を図る治療です。この症例では、骨の量が不足していた上あごの奥歯に骨を増やす処置(サイナスリフト)、前歯の歯茎に厚みを回復させる処置(結合組織移植)、および噛み合わせの高さと下あごの位置の再設定をあわせて行っています。
費用:6,600,000円(税込)
治療の期間・回数:2年
治療のリスクや副作用:手術後に、痛みや腫れ、出血、合併症などを引き起こす可能性があります。治療終了後にメインテナンスを継続しないと、インプラントが抜け落ちる可能性があります。
浜松市浜名区・浜北でインプラント治療をお考えの方、過去に「インプラントは難しい」「骨が足りない」と言われた方も、まずはご相談ください。
お口の状態を詳しく検査した上で、残せる歯と残すのが難しい歯、考えられる治療方法をご説明いたします。ブリッジや被せ物のやり直し、インプラントのやり直しについてのご相談も承っています。
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